北大阪商工会議所 会員紹介

2026.06.18更新

株式会社オンザテーブル 代表取締役 岡嶋 宏明様

ケーキの魔法で「ありがとう」を生み
地域とともに、まちの資産価値を高めていく

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今回の主人公は、洋菓子の製造・販売やカフェ運営を手がける株式会社オンザテーブル代表取締役、岡嶋宏明氏。同社は2003年、寝屋川市に一号店となる「Tea co latte(ティコラッテ)香里園本店」をオープンして以来、地域に愛される店づくりで店舗数を増やし続け、現在は寝屋川市・茨木市で計7店舗を展開している。
ティコラッテのショーケースには常時、旬の果物などを用いた季節感あふれる洋菓子25種類以上が並ぶ。飽きさせない豊富なラインナップを支えるのが、「セレクション」という社内制度だ。これは、同社のパティシエが春夏秋冬ごとに新作ケーキを考案し、書類審査や試食審査を経て選ばれた8種類が店頭に並ぶという仕組み。ベテランから入社1年目の若手まで、全てのパティシエに等しく開かれた挑戦の場が創意工夫を生み、ショーケースに絶えず新鮮さをもたらしている。生菓子だけでなく、焼き菓子やスリランカ産の最高級セイロン茶葉を使用した「ムレスナティー」などケーキに合う紅茶も取り揃え、ギフト需要にも応える。中でも訪れる人を惹きつけるのが、ケーキをその場で味わえるカフェを併設していることだ。そこには、岡嶋氏の強い想いが込められている。

ケーキは人の笑顔を生む「魔法」

インターネットバブルが崩壊し、社会全体が閉塞感に包まれていた2000年、大阪市の南船場では若者を中心にカフェブームが巻き起こっていた。大学時代、運送会社の建物をリノベーションしたカフェレストランでアルバイトをしていた岡嶋氏は、店内の華やかな雰囲気に衝撃を受ける。当時飲食業界に抱いていた「3K(きつい、汚い、危険)」というイメージを覆す、洗練されたドリンクや店内ミュージック、そして何より、サーブした瞬間にお客様を笑顔にするデザート。「まるでケーキの魔法だ」と、岡嶋氏は感じた。
折しもムレスナティーと出会い、奥深い味わいに感銘を受けた岡嶋氏は「自分も、ケーキと美味しい紅茶の魔法で人を笑顔にしたい」と一念発起。アルバイト先で共に働いていたシェフを口説き、24歳で起業する。こうして2003年11月、香里園にティコラッテが誕生した。

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代表取締役 岡嶋宏明氏

わずか15坪の小さな店舗だったが、カフェの併設は譲れなかった。作りたてのケーキをムレスナティーなどのドリンクとともに提供し、お客様の笑顔を生む。そして、その笑顔を間近で見られる— —岡嶋氏が思い描いていた飲食業の醍醐味が、そこにあった。お客様の満足度も高く、オープン直後は一日約100万円を売り上げるほど大繁盛だったという。
ところが半年後、客足はぴたりと途絶え、一日の売上が3万円にも満たない日が続くようになった。先行きへの不安が募る中、転機となったのはある夏の出来事だった。「エアコンが故障した蒸し暑い店内に、お客様がゼリーを一つ買いに来て、『ありがとう!』と笑顔で帰っていかれたんです。その瞬間、お客様が来ないことを憂うより、目の前にいる一人のお客様を笑顔にすることに全力を投じようと改めて思いました」。
この時のことを、「商品力はもともと高かった。足りないのはソフトパワーでした」と振り返る岡嶋氏。それ以来、来店するお客様の顔と名前、購入した商品を記憶し、次回の来店時に「この前のケーキの味はどうでしたか?」「今日はどのケーキにしますか?」と一人ひとりと心を込めたコミュニケーションを重ねた。同時に、新作情報などを伝えるメールマガジンの配信も始め、リレーションシップを丁寧に深めていった。地道な積み重ねはやがてティコラッテを応援してくれるファンを育て、売上は着実に回復。茨木市に2店舗目を構えるまでに成長した。

「ありがとう」が巡る組織づくり

お客様とのコミュニケーションは売上拡大に大きく寄与した一方で、カフェ運営の属人化という課題も生んだ。来店するなり「今日は岡嶋さん、いないの?」と質問するお客様を前に、スタッフは「私では力不足」と肩を落とし、仕事へのモチベーションを失っていった。会社が成長軌道に乗り従業員が増加していく中、岡嶋氏個人ではなく、スタッフ一人ひとりや店そのものが選ばれる組織へと変えていく必要があった。そこで、岡嶋氏自身は店頭から身を引くと同時に、スタッフが主役として活躍できる環境の整備に注力した。その軸となったのが「理念・使命・バリュー」の浸透だ。
社内研修会でスタッフと膝を突き合わせ、開業当初から掲げる「おめでとうを守り 心の満足を提供する」という使命と、「ありがとうを集めよう ありがとうを伝えよう」という理念への認識を深めていった。「どうすればありがとうを集めることができるだろう?」。その問いかけを繰り返す中で、スタッフの意識は少しずつ変化していった。例えば、ベビーカーを押すお客様のために先回りしてドアを開ける、誕生日ケーキの相談には期待を超えるひと工夫を添えて提案する、といった小さな気配りや丁寧な接客の積み重ねが、お客様の笑顔や「ありがとう」を生み出す。この成功体験がスタッフの自信となり、モチベーションへとつながっていった。変化が見え始めるまでには3年ほどの期間を要したが、この地道な取り組みこそが、地域に選ばれる店としての土壌を形成したことは間違いない。

さらに、「ありがとう」はお客様に対してだけでなくスタッフ間でも大切にされている。それを表す取り組みの一つが、20年前から続いている「サンクスカード」だ。互いの感謝を綴ったカードを専用ポストに投函すると、翌月の給与明細とともに相手のもとへ届くという仕組みだ。受け取る喜びが、「ありがとうを集めよう」という自発的な行動を促し、感謝の連鎖が生まれていく。当初は10枚書くと500円を支給するインセンティブを設けていたが、今では感謝を伝え合うことがカルチャーとして根付き、カードの数は年々増加。中には年間数百枚ものカードを受け取るスタッフもいるという。
お客様にもスタッフにも「ありがとう」が巡る組織へ。こうした歩みの積み重ねが、ティコラッテを地域に愛される存在へと押し上げていった。

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創業当初から愛されるタルト

店づくりでまちの記憶をつないでいく

岡嶋氏の視線は今や、お客様やスタッフだけでなくまち全体へと向けられている。同社がバリューに掲げるのは「街の資産価値を上げる」こと。その姿勢は、出店のあり方にも色濃く表れている。例えば、寝屋川の「イート店」はもともと診療所だった建物だ。閉院にあたり「建物を壊したくない」という院長の想いを受けた岡嶋氏がその場所を借り受け、リノベーションを施してカフェとして生まれ変わらせた。店内には、照明やリノリウムの階段など当時の面影をあえて残している。「地域の記憶が宿る空間に、お客様がまた足を運んでくださり、新たな雇用やコミュニティも生まれる。ティコラッテは、ケーキを提供するだけではなく、地域の人たちの思い出を引き継ぎ、リレーションを生み出す存在にもなれているのかもしれません」。
2021年には寝屋川市とタッグを組み、寝屋川市駅直結のショッピングモール「アドバンスねやがわ」内にある市立中央図書館に「ライブラリー店」をオープンした。岡嶋氏は「小学生の頃、建物の4階にあったおもちゃ売り場に胸を躍らせたものです。ライブラリー店があるのも同じフロア。あの頃自分が感じたように、またここで誰かがワクワクしてくれたらうれしいですね」と話す。さらに2023年には茨木市の複合施設「おにクル」に「テラス店」をオープン。連日多くの人で賑わっている。

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地域の記憶がよみがえるお店の外観

最近では、地域の商店のブランディングにもアイデアを提供するなど、まちとの関わりはさらに深まっている。「外の視点があるからこそ、その店のポテンシャルに気づけるんですよ」と岡嶋氏。今後は、経営に悩む地域の商店や企業とティコラッテとのコラボレーションを積極的に仕掛け、新たな価値創出を目指したいという。
高齢化の進行や後継者不足により、地域の商店が廃業を余儀なくされるケースは少なくない。それは、一軒の店が閉じるということにとどまらず、住民サービスの低下やまちの活力の衰退を招く大きな課題でもある。当商工会議所もこうした地域の現状に向き合い、商店や地域企業の活性化を通じてまちの資産価値を高めることを使命にしている。同社とともに、これからも地域活性化を推し進めていきたい。

培った地域への理解を活性化の力に

最後に今後のビジョンをうかがうと、岡嶋氏はコロナ禍での気づきを語ってくれた。「ステイホームを余儀なくされた時でも、多くのお客様がケーキを買いに来てくださいました。ただ、どこか『不要不急の外出をしている』という後ろめたさを感じているように見えました。ですが、社会情勢が不安定な時ほど、家族で一つのケーキを囲む時間は心に安らぎを与えてくれるもの。ケーキは単なる嗜好品ではなく、実は心にとっての『生活必需品』なのだと感じました」。
百貨店のような特別な場所ではなく、まちの路面店だからこそ、人々の普段の生活に寄り添い、お祝いの瞬間にも一番近くで「おめでとう」を見守ってこられた。「どうすればもっと笑顔になれるか」を常に考え、愚直に実践してきたことで、同社には今、地域やお客様への深い理解が蓄積されている。「これまで培ってきた集客のノウハウや行政とのコネクション、農家とのつながりなどのリソースをもっと地域のために活用できたら。話題を作り、活性化に貢献していきたい」と岡嶋氏は力強く話す。
確かな理念を持つ同社と地域の商店や企業がタッグを組み、ともに事業を広げていけば、その先に待っている地域の未来はもっと面白く、明るく広がっていくに違いない。

Member Data

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事業所名 株式会社オンザテーブル
所在地

〒572-0084
大阪府寝屋川市香里南之町28-24-108

TEL

072-833-8383

HP

29306996_s (1)

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