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2026.09.11更新
(この記事は、会報誌『North』9月号(2026)に掲載されたものです)
これまで我々日本国民にとって中東情勢は、紛争等のリスクはある程度許容しながらも、概ね対岸の火事という認識だったのではないだろうか。ところがその認識をほぼすべての人々が改めざるを得ない事件が起こった。2026年2月28日のホルムズ海峡の封鎖である。これにより中東に国内消費の95%以上の原油を依存してきた我が国は消費生活に限らず、経済安全保障という面でも深刻な影響を受けることとなった。
原油から抽出されるのは石油だけでないということも改めて強く突き付けられた。原油を加熱して蒸留すると、燃料となるLPG・ガソリン等、プラスチックや有機溶剤などの原料となるナフサ、道路に使われるアスファルトなどが抽出される。今回最も話題となったのは生活やビジネスに直結する「ナフサ」だ。
政府は備蓄原油を放出する事態となり、不足する原油を調達するため、アメリカ、中南米、中央アジア、アフリカなど中東以外からの調達先多角化を進めた。そして6月17日、アメリカとイランの間で遂に14項目の暫定的な合意文書が交わされ、日本関連船舶も次々とホルムズ海峡を通過する吉報が続き、7月には日本関係原油タンカーがすべて通過できたようだ。高騰していた原油価格もダブついた中東産原油を中心に下落していったが、今般、リスクヘッジのために中東への原油依存度を下げ、多角化した原油調達ルートはそのまま残るのではないかと言われている。
今般は一連の騒動を作り出したエネルギーショックが我が国や世界へもたらす地殻変動の兆候とこの間の商工会議所の働きかけについて触れていきたい。
一連の危機は一時的な価格高騰にとどまらず、不可逆的な「エネルギー地殻変動」を決定づける契機となった。今後の世界エネルギー構造は、以下の地殻変動の3大潮流を中心に再編されるだろう。
中東リスクの常態化は、化石燃料の安定調達という前提を根底から覆した。短期的には米国や他の非中東地域からの代替調達が進み、中長期的には「脱炭素」と「エネルギー安全保障」が完全に同義となり、再生可能エネルギーや水素など、地政学リスクに左右されないクリーンエネルギーへのシフトが世界中で爆発的に加速するだろう。
今回のイラン情勢を巡る激動は、従来の「安価で安定した化石燃料」に依存した供給体制が終わりを迎えたことを示唆している。日本経済、とりわけ基盤を支える中小企業が生き残るためには、省エネ投資の加速やビジネスモデルの転換が急務だ。エネルギーの地殻変動はすでに始まっている。この荒波を乗りこなすためには国家レベルでの戦略再構築が求められている。
北大阪商工会議所では中東情勢の悪化を受け、全業種的にコスト高に苦しむ中小企業に向けて全国の商工会議所と共に「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」を設置。日本商工会議所が実施した「全国の中小・小規模企業を対象とした中東情勢の緊迫化による中小企業へのエネルギー等の影響調査」を経営相談に活かしながら、経営指導員を中心にヒアリングと経営支援に奔走した。同時に枚方信用金庫と連携し「中東情勢の影響を踏まえた中小企業等への金融支援強化に関する要望書」を日本商工会議所と枚方市に提出。物価高騰や仕入不振によるキャッシュフローの悪化に対応した金融支援等を要望した。また交野市工業会では講師例会に(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)調査部中東アフリカ課 内田課長をお招きし「中東・イラン情勢と経済への影響」と題して、これまで連綿と中東情勢を調査・連携をされてきたエキスパートから見た今後の見通しをお聞きし、また今後進むであろう再生可能エネルギーへの潮流も見据え「省エネ補助金」の概要を(一社)環境イニシアチブ笹田氏にお話いただいた。
今後も下がることはないだろうと言われているコスト高で苦しむ中小企業は増加の一途を辿るだろう。引き続き当所では経営支援を核に会員を中心とした中小企業の皆様を守ることを使命としている。お困りごとがあればどんな些細なことでも是非商工会議所を頼っていただきたい。
※本記事は、会報誌『North』9月号(2026)より転載しました。