北大阪商工会議所 会員紹介
2026.02.09更新
老舗木材店からスポーツ企業へ
創業三十周年 「枚方」を背負い、水泳界の未来を創る

今回の主人公は、枚方市に拠点を置く木幸スポーツ企画株式会社の代表取締役、新庄幸一氏(67歳)。同社は、創業150年以上の材木店が起源で、1981(昭和56)年に材木店の敷地の一部でスイミングスクールを開設、1995(平成7)年に新庄氏が“第二創業”して設立した。設立後、わずか5年でシドニーオリンピック競泳で中西悠子選手を輩出し、アテネオリンピックでは銅メダリストとなるなど選手育成に成功し、輝かしい実績を誇る。現在も、「枚方」を冠したブランディングで、多数のオリンピック候補選手を育成しており、2028年ロサンゼルスオリンピックにも期待が集まる。
一方、少子化等の影響から危機に瀕する学校水泳の存続に向け、枚方市内に学校水泳専用プールを整備する構想を進めているほか、高齢者向けのニュースポーツとして、プールの中で行うバレーボール「アクアバレー」の普及といった地域貢献活動にも積極的に取り組む。
「本気でやる気にならなければ前進しない」と強調する新庄氏に話を聞いた。
先述の通り、木幸スポーツ企画株式会社のルーツは、明治時代に遡る。1871(明治4)年に新庄氏の高祖父にあたる幸市氏が「木幸木材店」を交野市で開業。材木の「木」と幸市氏の「幸」から屋号を「木幸(きこう)」と名付けた。「生まれた時から材木屋を継ぐのは運命だと思っていた」という新庄氏。五代目として材木屋と内装工事の仕事に従事した。1981(昭和56)年には、新庄氏の父が社屋の半分を利用してスイミングスクールを開設。関西テレビの子会社が運営する「KTVスイミングスクール」に貸した。10数年が経過すると、プール管理の機械などの設備が更新時期を迎えた。スイミングスクールの競争が激化する中、設備投資には多額の費用がかかる。その一方で、KTV側から家賃交渉を持ちかけられていた。当時30代半ばの新庄氏が交渉にあたっていたが、まさにその最中、父が交通事故で急逝、新庄氏は一人で交渉を続けることになった。
そして、新庄氏は自らスイミングスクール事業を行うことを決意する。これが1995(平成7)年の「第二創業」である。学生時代にキャンプリーダーを務め、関西のスイミング界との個人的な繋がりを持っていたことが、この決断を後押しした。新庄氏の下には、KTVの子会社を定年退職する元社員やその腹心合わせて7人のメンバーが結集し、新たなスタートを切った。当時37歳だった新庄氏は、「次に青年会議所の理事長に就こうかというような血気盛んな時期で、何の根拠もない自信があった」と振り返る。材木業と内装工事の看板を持ちながら、二足のわらじで事業を始めた。そして新庄氏は、社員に対し、壮大な計画を提示する。「7年後にもう一つスイミングスクールを作る。さらに5年後に一つ、その後3年ごとに施設を増やして、20年で七つ作る。7人皆を一国一城の主にするからついて来い」と鼓舞したという。
この計画通りに、同社は星田、生駒、牧野など次々とスポーツ施設を展開していく。特に星田の施設では、計画倒れになっていた天然温泉付きの建物を、収益性を高めるために自ら図面を書き直し、プールを5コースに増設しフィットネスクラブを併設した。事業の多角化として、豊中などで導入した幼稚園児向けの「放課後スイミング」のシステムを買い取り、枚方でも展開した。幼稚園からスイミングスクールへの送迎も行い、親の送迎の負担を減らすことで、働く親だけでなくあらゆる保護者層に広く受け入れられた。同社の経営理念は「すべてはまちに愛されることから」である。地域密着型のスポーツクラブとして、現在、枚方だけで約3000人、全施設合わせると約1万人の会員を誇る企業へと成長を遂げた。
同社が誇るのは、地域に根差したアスリート育成を通じた「枚方ブランド」の確立である。創業時に「2008年までにオリンピック選手を出す」という目標を掲げた。しかし、わずか5年後の2000年シドニーオリンピックに中西悠子選手が出場、7位入賞を成し遂げ、早々と目標を実現した。中西選手は4年後のアテネオリンピックでは200mバタフライで銅メダルを獲得するなど、世界に名を刻んだ。「オリンピックへの道は、本当に大変で、そしてとんでもないお金がかかる」。海外合宿費など多額の費用を会社が負担するわけだが、その投資は「枚方スイミングスクール」というブランドを水泳界で広く知られた存在にする原動力となった。
同社の選手育成の根幹にあるのは、徹底した地域へのこだわりと愛着である。選手たちは日本選手権などの大舞台で、キャップに「枚方」の漢字を掲げて戦う。「これは絶対に、ステータスになる。枚方を背負って戦うっていうことが大切」と新庄氏は強調する。この地域愛と地元への感謝を胸に、現在もトップ選手を輩出し続けている。昨年からは、地元選手を応援するため、選手育成コース強化費のクラウドファンディングも始めた。

楽しそうに選手やスタッフ、会社について話す新庄社長
現在、同社が育成する選手は枚方のスクールだけで100人以上、全体で約250人の選手が活動している。基本的に転校を受け付けておらず、「全部うちで育った子たち」だ。
特に注目すべきは、近年の活躍である。今福和志選手は2025日本選手権1500m自由形で14分50秒18、日本新記録を11年ぶりに4秒62と大幅に更新した。すでに東京オリンピックの参加基準タイムを超えており、ロサンゼルスオリンピックでの活躍が期待される。梶本一花選手は2025世界選手権で、過酷な長距離水泳競技、OWS(オープンウォータースイミング)で3㎞金メダルを獲得した。このほか、世界ジュニア記録保持者(2025年9月現在)の大橋 信選手、日本選手権200mバタフライ優勝の藤本 穏選手らにも注目が集まる。
OWSの強化は同社の指導の特徴だ。「一回で1万m以上の練習は平気でしている。長距離型の練習が強さの秘訣となっている」という。

トップ層だけでなく、次世代の育成にも力を注ぐ。現在、中西悠子コーチが、幼稚園児を対象に週3回練習する「枚方道場」を主宰。「選手になる心構えを教えながら、練習ではニコニコしながら子どもたちが2000m以上楽しそうに泳いでいる」。
同社では、より裾野を広げるための工夫も凝らす。家計の負担を減らすため、レッスンを通常より短くし、「30分で半額」のコースを設定、進級の証であるワッペンで継続意欲を促す。「スイミングは入った場所で卒業する傾向が強いため、最初のステップで離さない工夫が重要だ」と新庄氏は語る。
そして、同社が最も大切にしている指導原則は「水難事故防止」であり、ヘルパーをつけない指導を徹底している。最近では、自社専用の生成AIも活用、コーチが指導の意図を打ち込むと、AIが指導法を提案する仕組みで、指導の質の向上にも力を注ぐ。

安藤 陽さん

奥園 心咲さん

梶本 幸花さん

梶本 一花さん

今福 和志さん

大橋 信さん

藤本 穏さん

立役者の太田コーチ
新庄氏は永年、当商工会議所議員を務められ、地域貢献にも積極的に取り組んでこられた。新庄氏が今、力を注いでいるのが「学校水泳の火を消さない」ことだ。学校プールの老朽化や熱中症リスクなどで小学校でのプールの授業時間が消滅しつつあるという。枚方市内の小学校で、同社も含め民間のスイミングスクールが授業の受け入れをしているのは一部にとどまっているのが現状で、新庄氏は、「学校水泳がなくなったらスイミングスクールの価値もなくなるし、水泳というものの価値もなくなる。何より、水難事故防止の使命を果たせなくなる」と強く懸念し、学校水泳を存続させることが自社の社会的使命だと捉えている。
この課題を解決するため、旧中宮北小学校の跡地にあるプールを活かし、同社が投資をし学校水泳専用プールを建設する計画を市教育委員会と進めている。しかし、年間に2時間の授業単位を5回行う学校水泳だけでは採算が合わないため、放課後時間は一般のスイミングスクールとして運営する計画だ。「当初は、夢プロジェクトだったが、順調に進めば、2027(令和9)年の開校が可能なところまで現実味を帯びてきた。やはり、誰かがやりださないと進まない。誰かがやってくれるだろうとか、いつかできるだろうでは何もできない」と強調する。
このほか、高齢者の健康増進に向けたニュースポーツの開拓にも力を入れる。富山県で盛んなビーチボールを使った円陣バレーをプールの中で行う「アクアバレー」は、転倒し怪我をする心配がなく、90代の方でも安全に取り組めるという。「瞬発力、持久力、筋力などがアップしたというデータもあり、枚方発の健康スポーツとして広げたい」と意気込む。「すべてはまちに愛されることから」という理念を掲げる同社。地元枚方を愛し、地域に根ざした挑戦を続けている。この飽くなき挑戦心こそが、企業の成長を牽引する力となっている。

| 事業所名 | 木幸スポーツ企画株式会社 |
|---|---|
| 所在地 |
〒573-0026 |
| TEL |
072-844-1210 |
| HP |

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