北大阪商工会議所 会員紹介

2025.07.07更新

株式会社初亀 代表取締役 亀岡健太郎様

1970年大阪万博から55年、再び挑む
大阪・関西万博で「発酵」テーマに次代を拓く

今回の主人公は、枚方市三矢町に本社があるフードサービス等を展開する株式会社初亀の代表取締役、亀岡健太郎氏(50)。「飲食業」がまだ確立されていなかった1950年、健太郎氏の祖父・亀岡謙次氏が「亀岡商店」を設立し、公園やプールの売店などを営んだのが始まりだ。1970年の大阪万博で「初亀食堂」を出店。うどんやかき氷、コカ・コーラなどを販売し、大繁盛したという。翌年、株式会社初亀として法人化。「70年万博が外食元年」と言われるのをまさに体現した企業と言える。その後、つくば科学博、大阪花博、愛知万博などにも出店し、「博覧会でフードサービスを提供する会社としては、日本一」と自負する地位を築いた。イベント出店に加えて、レストラン運営やフランチャイズ展開、バーベキュー施設の運営などを幅広く手掛けるフードサービス企業へと大きく成長した。

55年の時を経て、現在開かれている大阪・関西万博には「発酵食」をテーマにした新しいスタイルのカフェレストラン「醗酵食堂 HASSHOKU(はっしょく)」を出店。木桶で作る醤油、味噌など日本の発酵食文化の魅力を世界に発信し、そして未来につないでいこうというコンセプトで、SDGsに沿った店舗づくりにもこだわり、大きな注目を集めている。

「拡大のための拡大はしない」という、健太郎氏の父である先代社長の亀岡育男氏のポリシーを受け継ぎ、健全な成長を目指す3代目社長亀岡健太郎氏に話を伺った。

1970年大阪万博での飛躍

万博と共に歩んできた
「初亀」の展望について語る亀岡社長

まずは、株式会社初亀の歴史をご紹介しよう。健太郎氏の祖父で、創業者の亀岡謙次氏は、徳島出身で九人きょうだいの五男だった。仕事を求めて大阪に出てきて、まだ「飲食業」というものが確立していなかった1950年に「亀岡商店」を設立。大阪市内の公園やプールで食べ物の売店を始め、大相撲大阪場所での出店・専属業者にもなった。

ファミリービジネスから企業化へと大きな転機となったのは1970年の大阪万博だった。売店で販売していた実績から飲料メーカーの協賛を受け、「初亀食堂」を出店し、うどんや焼きそば、かき氷、コカ・コーラなどを販売した。「祖父と、当時まだ大学生だった父が、千里のホテルで行われた博覧会の入札会で、扱ったこともないような金額を入札し、出店の権利を得た。当時、店は大繁盛で、忙しすぎて大変だったと聞いている」と明かす。万博成功を機に、1971年に法人化。京阪の枚方市駅前にビルを建て、立ち飲み屋のような業態で「初亀」を開店した。「70年万博が外食元年」と呼ばれる時代の波に乗り、初亀は企業化の道を進んで行った。

以降、1985年のつくば科学博、1990年の大阪花博、2005年の愛知万博などの国際博覧会のほか、毎年のように開かれる地方博覧会への出店を重ね、実績を積み上げた。愛知万博では、先代の亀岡育男社長が出店者連絡会の会長を務め、「博覧会でフードサービスを提供する会社としては、日本一」と誇る業界での中心的存在となった。

一方、愛知万博以降は、国際博覧会の計画がなかったため、同社は、レストラン経営や「かつや」や「タリーズ」などのフランチャイズ展開にも乗り出す。また、公園でのフードサービス提供の実績を活かし、「手ぶらで楽しめるバーベキュー」という新たな業態を始め、これが大ヒットにつながった。当初、舞洲で始め、現在は、我が街枚方市の山田池公園、大阪府の服部緑地、大阪市の長居公園など府内数ヶ所で「手ぶらBBQレストランGoodBBQ」を展開している。「食材の準備、火おこし、片付けが不要で、キャンプのようなスタイルで手ぶらバーベキューができる業態は、大阪では初亀が最初に舞洲で始め、広がっていった。バーベキューができる公園でも、場所取りのトラブルやゴミの問題などがあり、公園側が頭を悩ませていた。バーベキューは好きだけど、片付けをしたい人はあまりいないし、グループでの割り勘がしやすいといった点が評価され、企業のレクリエーションやお子様連れのママグループなどにも人気だ」という。

ビールイベントも大ヒット

初亀は、全国で人気を集める「オクトーバーフェスト」と呼ばれるビールイベントやフードフェスにも積極的に参加している。オクトーバーフェストはドイツ・ミュンヘン市で開かれる世界最大級のビールの祭典で、日本でも2005年ごろから東京や横浜で行われるようになった。2011年に大阪で開催する際、初亀に入社したばかりの健太郎氏が先代社長と共に関わり、天王寺公園を舞台にした「大阪オクトーバーフェスト」を成功に導いた。「先代が、これまでのつながりから大阪市との調整などを担った。公園で販売行為を伴うイベントを10日間開催するのは、非常にハードルが高いのに、天王寺エリアの再開発に力を入れたい市の意向とうまく合致した」と明かす。その後、リニューアルした「てんしば」で、コロナ禍の中断はあったものの毎年続く人気イベントとなっている。「イベント出店は、“ハイリスクハイリターン”。当たれば短期間で高収益が見込めるが、天候リスクも大きい。全国で同時に数ヶ所出店するなどして、リスク分散を図っている」と明かす。

「発酵」をテーマに大阪・関西万博での挑戦

HASSHOKU外観

1970年万博を機に成長した初亀。55年ぶりに開催される大阪・関西万博に「出店しない選択肢はなかった」という。半年ほどかけて練り上げたコンセプトは、「発酵」をテーマに日本の食文化を発信するレストラン。あえて日本食ではなく、ハンバーグやカレー、パスタなど親しみやすいカフェメニューに味噌や醤油、酒粕といった発酵食材を組み込み、発酵食品の一つである日本酒も扱う。店の名前は、「醗酵食堂 HASSHOKU」とした。「アルファベットにすることで『醗』から、発信、発展、発達などいろいろな意味を感じてもらいたい」という。

なぜ発酵に着目したのか。「今回の万博のテーマは『いのち輝く未来社会のデザイン』で、高度成長ではない、モノがふんだんにあることが幸せといった価値観ではなく、“ウェルビーイング”や“サスティナブル”がキーワードになっている。これまで初亀が掲げてきた『食・遊・楽』というキーワードだけではフィットしないため、発想を変えた。今ある良きものを次世代に受け継ぐといったことを打ち出そうと考えた時に『発酵』という日本の食文化が浮かんだ」と解説する。

約180席ある店内は、SDGsに沿った店舗づくりにもこだわった。江戸時代から醤油などを作る際に使われてきた“木桶”をモチーフにした席も設け、空間そのものが発酵文化を体験できる場となっている。世界的デザイナーのコシノジュンコ氏監修のもと制作された墨絵をモチーフにしたユニフォームも目をひく。「これまで発酵食品にこだわった業態をやっていたわけではなかった。今回、発酵という旗を立てて動き出したら、さまざまな情報が入ってきた。伝統的な木桶で作る醤油の全国シェアは1%ほどと言われていて、香川県で『木桶職人復活プロジェクト』を進めていることも知った。旗を立てると人が集まってくる万博のパワーを感じたし、万博はやはりエポックメイキングなので、終わった後、このコンセプトやメニューを引き継ぐ店を出したい」と亀岡社長は熱く語る。

広々とした店内で迎えるのは
木桶職人プロジェクト協力の桶のボックス席

社長のこだわりで集めた発酵食品を販売

味噌に漬けたチーズ豆腐と拘りの醤油3種

麹に漬けた鴨の冷製レモンパスタ

麹入りのパテとソースのハンバーガーセット

味噌のネタおにぎり3種のセット

厳選した日本酒とチーズ豆腐のセット

商工会議所青年部活動の集大成

改めて3代目社長の亀岡健太郎氏をご紹介するが、大学卒業後、ラジオ大阪系列の制作会社でウェブ制作やイベント企画に従事したのち、2010年、35歳の時に初亀へ入社。2020年、45歳で3代目の代表取締役社長に就任した。「コロナ禍という逆風の中での就任だったが、『どん底で交代すれば、あとは上がるだけ』と考えた」という。しかし、翌年、先代の亀岡育男氏が71歳で逝去。全国飲食業生活衛生同業組合連合会会長のほか、当商工会議所副会頭も在職中のことだった。

健太郎氏も、当商工会議所青年部会長(2023年度)を務め、日本商工会議所青年部にも出向。「地元で一団体、業界で一団体、社外で汗をかこうと決めている。地元が一緒で異業種の方々と交流するのは商売にもつながるし、非常に勉強になる。今回の万博出店で、仕入れている醤油や味噌は、日本商工会議所青年部で知り合ったコネクションが活きているので、“商工会議所青年部活動の集大成”的な意味もある」と強調する。「万博で儲けることが目的ではなく、きっちりといい仕事をして、『やはり初亀に任せたら安心だ』と認めてもらうことが、今後のイベント業界における初亀のブランディングとして大切だと考えている」。

「健全な成長」を貫く

初亀の経営理念は、「社業を通じて、個人の資質の向上を図り社会に貢献する」。そこには「会社の発展」という言葉はない。「まず社会人として一人前になってもらう。個人が成長すれば自ずと業績も上がるし会社も発展するという考え方。無理に規模の拡大を目指すのではなく、今いる人材の成長に合わせて会社も健全な成長をさせたい。だから拡大のための拡大はしない。これが父から受け継いだ教えで、それを継承していきたい」と語る。そして、イベント業界でトップを走ってきた企業として、「イベント全体の理念であったり、主催者、運営者がこだわっているところは一緒にこだわり、ステークスホルダーがみな良かったと思えるような仕事をしていきたい」。今後も公共空間や大規模イベントを舞台に、「三方よし」の精神で事業を展開していく方針だ。55年前の大阪万博を機に法人化し、大きく成長を遂げた初亀。大阪・関西万博後の未来が楽しみだ。

Member Data

事業所名 株式会社初亀
所在地

大阪府枚方市三矢町2-5
コマサビル1F

TEL 072-845-1980
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